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コロナ禍におけるインド会社設立

コロナ第一波では、2020年3月末より実施された厳格なロックダウンにより、2020年4~6月期の経済成長率が大幅に落ち込みました。しかしながら、政府主導の強力なリーダーシップによる新型コロナウイルス対策と、段階的なロックダウン解除と経済再始動により景気が回復しました。一方で、現在の第二波が今後どのような影響を及ぼすのかは、今後も情報をアップデートして参ります。

本記事は、インドのアフターコロナを見据えた会社設立、すでに会社設立されている方の経営判断に役立つ判断材料となる情報をおまとめしています。

コロナ前の日系企業インド進出状況

インドに関する話題は最近においても日本のニュースで頻繁に取り上げられるようになりました。コロナ前までは、日系企業のインド進出は右肩上がりで上昇していました。

 

1) インドのビジネスポテンシャル

そのビジネスポテンシャルは、今後の急速な成長によりアジアの中心を担う経済大国となる可能性を秘めています。これらを数字や言葉で捉えるとどうでしょうか。

インド 基礎概要  

インドが抱える人口は、中国に次ぐ約13億人で、2030年には中国を抜き世界1位の15億人、さらに2050年には17億人に達するとの見方もあります。加えて、現在の国民の平均年齢は28歳となっており非常に若い人材がたくさんいることがわかります。また、その爆発的な人口成長は旺盛な需要を生み出すと予測されており、今でこそインドのGDPは日本の半分程度ですが、2029年には日本を追い越して世界第3位、さらに2035年には10兆ドル(約1,000兆円)規模に達すると推計されています。このように、インドがアジアの経済大国となる可能性は十分にあると考えられます。  

2) 外国企業によるインドへの直接投資

インドに進出する日系企業は、JETRO(日本貿易振興機構)の統計情報によると、2020年10月時点で1,455社、拠点数は4,948カ所です。

インド 日系企業進出

業種別では、製造業が49.3%と約半数を占めており、その後に卸売業が12.9%、情報通信業が5.9%、運輸業・郵便業が4.9%と続いております。日系企業の進出数だけでみると、ASEAN諸国と比べるとまだまだ数多く進出しているとは言えませんが、それでも着実に増え続けている状況にあります。

ナレンドラ・モディ首相は、Make in India(以下、メークインインディア​)という世界の製造・輸出拠点を目指す公約を掲げており、外資誘致による製造業振興策を推進しています。インドは東・東南アジア地域と中東地域を結ぶ陸上・海上の交通路に位置しており、歴史的にみても貿易おいて重要な役割を果たしてきました。現在では、新型コロナウイルスの蔓延によるチャイナ・リスクの高まりを受けて、インドは中国に代わる新たなサプライチェーンの候補地としても更に注目を浴びています。こうした背景から、日系企業においても対印投資は今後も増加していくことが読み取れます。

インドの新型コロナウイルス関連情報

インド国内における新型コロナウイルス関連情報についてご紹介します。
*こちらは2021年4月28日時点の情報です。最新の情報はインド政府の公式HPにて各自ご確認願います。

1) 新型コロナウイルス感染者数の推移

2020年第一波
2020年9月にピークを迎えた第一波では、1日あたり新規感染者は約10万人を出しました。その後は、1万人前後を推移、経済活動も本格始動していました。

2021年第二波
2021年3月下旬頃から第二波が到来しており、新型コロナウイルスはインド全土で再度猛威を奮っています。感染再拡大の原因は諸説ありますが、感染力の強い変異株の出現が大きな要因となっているようです。2021年4月上旬、1日あたりの新規感染者は昨年の最大約10万人を超え、4月末には40万人を記録しました。一方で、新規感染者の増加と同様に新規回復者も増加しています。新規回復者の増加により、1日あたりのアクティブ感染者は、4月26日以降、減少を始めています。州ごとによって異なりますが、4月末時点、デリー準州は横ばい、ハリヤナ州は横ばい、マハラシュトラ州は減少、カルナタカ州は増加、タミルナドゥ州は減少の兆候、グジャラート州は減少、という状況となっています。医療酸素不足や医療器具不足などの問題が浮き彫りとなっていますが、友好国や近隣諸国の援助が始まっています。

 

2) インド政府のワクチン接種対応

インドでは、2021年1月16日から新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されました。まずは医療従事者や基礎疾患のある患者、45歳以上の高齢者などが優先され、5月以降は18歳以上の成人を対象としたワクチン接種が行われています。2021年4月28日までに一回以上ワクチンを接種した人数は、1億2千万人を超えています。このような迅速な対応を可能にしているのは、予防接種の予約システムにおけるITの活用です。

予防接種の予約手続きは2通りあり、新型コロナウイルス対策アプリの「Aarogya Setu」と、デジタルプラットフォーム「Co-Win」で予約が可能です。特にCo-Winは、Aadhaar(インド版のマイナンバー)を登録すれば、個人アカウントから接種予約や回数管理が可能といった優秀なシステムです。また、接種証明書がデジタルで発行されるため、データを適切に保管できれば紛失のリスクもほぼないため、ユーザーの利便性を重視したワクチン接種対応が進められています。

 

3) 第一波を乗り切った2020 年度のインド経済

2020年3月末より厳格なロックダウンを開始したため、2020年4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込みました。しかしながら、政府主導の強力なリーダーシップによる新型コロナウイルス対策と、段階的なロックダウン解除と経済再始動により景気が回復しました。乗用車販売も8月以降は伸び率がプラスに転じており、9月においては20%を超え、10月以降も前年同月比でプラス成長が続きました。

こうした経済動向を受けて、2020年11月にはインドの株価(SENSEX)が史上最高値を更新するなど、経済活動の正常化と景気回復が期待されていました。しかしながら、2021年3月下旬頃から新型コロナウイルス蔓延の第二波を迎えており、2021年4月以降は感染防止のため州単位でロックダウンが行われていることから、予断を許さない状況が続いています。

アフターコロナを見据えたインド会社設立準備を

今後のインド会社設立、インドビジネスの経営判断においては、下記の視点を持って進められることを推奨しています。

  • 進出の為に入念な準備と余裕を持った計画
  • インドの現在のルールを事前把握
  • 国単位で捉えず州で見る
  • 本社も巻き込んだ財務管理体制
  • 撤退のボーダーライン決定
  • 極力リスクを削ぎ落としたコンパクトな経営

新型コロナウイルスがインドへもたらした影響は大きいと言わざるを得ませんが、このコロナ禍が収束した後においてもインドのビジネスポテンシャルは変わりません。圧倒的な人口ボリューム、豊富なITエンジニア人材やソフトウェア開発技術、インド独自の発想から生まれる社会課題への対応力、その民族性がもたらす交渉力や英語力、世界に誇る医薬品生産ノウハウなどは、長期的な視点でビジネスを検討する上では重要な要素です。こうした観点を踏まえて投資先としてのインドを考察すると、他の国にはない圧倒的なビジネスポテンシャルが見えてくるはずです。


インド進出やインドでの事業を行う中で、必ず抑えておかなければいけない基礎概要とコロナ禍での現状を記載致しました。インドという国は、今後事業をグローバル展開していく中では間違いなく魅力のある国ですが、それと同時に急激な成長中であるが故にアンバランスになっている部分もたくさんあります。日本側で受け取る事の出来るインド情報は、必ずしも正しくない事も多いので出来るだけ現地の情報を収集するよう心がけていただければと思います。是非事前に相談いただければと思います。

 
 

【免責事項】 本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。

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