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インド資金調達|増資と借入のメリット・デメリットとは

今回は、これまでご紹介してきた、インドにおける外国企業の資金調達方法である増資、そして借入それぞれのメリット、デメリットについてお伝えしたいと思います。

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2019年1月アップデート|親子ローン/対外商業借入(ECB)の規制緩和と、外貨建て・ルピー建てECB規制
インド資金調達|外国企業が可能な資金調達の方法

自社の資金調達方法は、どちらの方法が適しているのか迷われている方に向けて、本記事の最後に検討ポイントについてもご紹介します。

インド資金調達 増資と借入のメリット・デメリット

まず初めに増資、続いて借入に関する概要とメリット・デメリットについてご紹介していきます。

 

インドにおける増資の概要とメリット・デメリット

増資とは、主に株式や社債発行による返済不要の資本を増資することによる資金調達で、3種類の方法があります。 ここでは、増資の手法の中でも、日系企業を含む外国企業がよく利用する手法「普通株式発行」に関するメリット・デメリットについて見ていきます。

増資のメリット

・基本的に返済の必要がなく、インド法人側の負担が少ない
・決算書上「資本」計上となるため、「負債」計上よりも客観的に信用がある
・申請後は報告などの業務対応が必要ない ・本取引に関しては移転価格リスクが発生しない

 

増資のデメリット

・移転価格等が厳しく見られるインドでは、利益還流が難しい
・資本金1億ルピー以上の会社は、社内に常勤の会社秘書役(Company Secretary)を設置しなければいけないルールがあり、コストが増える
・借入よりもプロセスが多く、申請時の手続きは煩雑
・非上場会社の場合には、純資産25億ルピー以上で会計基準IND-ASを強制適用される

 

増資がおススメな企業の特徴

  • 長期の目線でインド事業に投資し、直近で親会社への利益還流を検討していない会社
  • 利息での還流が無くても、十分に親会社への利益還流方法を準備して整えている会社
  • 負債の金額等で、会社の信用評価をされるケースが多い会社 など
 

その他の増資方法である、全額強制転換条件付優先株式発行(CCPs)、全額強制転換条件付社債発行(CCDs)をご検討の会社様は、直接ご相談いただければメリットやデメリットについてご説明させていただきます。

 

インドにおける借入の概要とメリット・デメリット

借入とは、返済義務のある負債増加による資金調達です。 借入には3種類の方法がありますが、中でも今回は、日系企業含む外国企業がよく利用する手法「親子ローン/対外商業借入(ECB)」に関するメリット・デメリットについて見ていきましょう。

 

借入のメリット

・利益還流方法の少ないインドでは「利息」による還流が行える ・申請手続きは、増資手続きよりも容易

 

借入のデメリット

・決算書上「負債」計上となるため、「資本」計上よりも客観的な信用が無い ・申請後にも毎月の報告が必要となり、遅延するとペナルティが発生する ・利息に対する移転価格リスクが発生する

 

借入がおススメな企業の特徴

  • 親会社への利益還流が近い内に必要となる会社
  • 親会社として、早めに資金回収を行いたい会社
  • 早く資金調達をしなければいけない会社 など

その他の借り入れ方法である、インドルピー建て普通社債発行(RDBs)、上場非転換普通社債発行(NCDs)を検討をされている方は、直接ご相談いただければメリットやデメリットについてご説明させていただきます。

インドで資金調達をする際の検討ポイント

上記だけでは増資・借入の判断がつかないという方には、更なる検討ポイントとして、今回の資金調達によって下記追加発生コストの有無を確認してみることをおすすめしています。

 

今回の増資で、資本金が1億ルピー以上となる

この場合、社内に常勤の会社秘書役設置必須となり、追加コストが発生します。

 

今回の増資で、純資産が25億ルピー以上になる

この場合、会計基準IND-ASへの対応が必須となり、追加コストが発生します。   上記2点に当てはまる外国企業の場合、増資がデメリットとなる場合があるため、一度別の方法をご検討いただくか、弊社に直接ご相談いただけくことをおススメしています。お気軽にお問い合わせください。

 


資金調達のメリットデメリットに関して解説させて頂きました。上記記載はあくまでも客観的なもので、状況はそれぞれの会社によって変わってくると思います。

自社の状況や親会社との関係、そして今後の展望等を整理した上で十分ご検討下さい。また検討した材料と意思決定に至った経緯も何かしらの形に残しておいて頂けると、事業を引き継いだ駐在員様の参考になりますので書面等に残して置くようにして頂ければより良いかと思います。

 

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】 本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。

インド 会計事務所

 

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