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2019年アップデート|インド会計・税務まとめ【前編】

本記事では、2019年中に行われた、インドでの会計・税務に関するアップデート内容を取り上げ、その中でも、日系企業の皆さんに知っておいてほしい情報をまとめました。
是非、自社のインドビジネスの参考にしていただければと思います。  

会計・税務のアップデートと法改正の違い


まずは、よく混同される、アップデートと法改正の言葉の定義について解説します。日本とインドでも言葉の定義が異なるため正しく理解しておく必要があります。
下のスライドをご覧下さい。
 
インド 会計税務 アップデート

 

アップデートとは、最新化、最新情報、最新版など、新しく変更された、または追加された現状での正しい回答を示します。それに対して、法改正とは、文字通り法律において不適切なところ、不備のあるところを改めることを指し、全く異なる意味を持つのです。

まずは、今回お話する内容はアップデートであって、法改正ではない点を念頭に置いていただき、この後の記事を読み進めていただければと思います。


また、インドでは日本で言う法改正をアップデートと言いますので、ご注意ください。
これは、インドでは毎年税率が変化したり、毎年細かく改正が入ったりなど、まだまだ基盤を作っている最中であるという事から、アップデートという表現を使用しているようです。

インド会計・税務に関するアップデートの時期

また、当地インドで行われる会計・税務に関するアップデートの時期ですが、以下のスライドのように、国家予算発表スケジュールに合わせて行われる傾向にあると言われています。

インド 会計税務 アップデート

 

しかし、アップデートのタイミングが、いつも国家予算発表が行われる2月頃になされるかというと、そうでもありません。タイミングは、随時としか言えないのが現状です。

また、インド総選挙がある年には、通常の2月から7月(2019年の場合)などにずれ込むこともあります。
そのため、インドでは会計・税務に関するアップデートについては、年中アンテナを張っておく必要があると言えます。

【2019年】インド会計・税務アップデートの日本経営的注目ポイント

続いては、実際に2019年内にインドで行われた、会計税務に関するアップデートの内容についてご紹介していきます。ここでは、2019年に行われた重要なアップデート内容4つのうち、前半の2つについてご説明していきます。

 

2019年1月16日、ECBに関するアップデート

まず、結論からお話ししますと、2019年のECB(External Commercial Borrowing・対外商業借入)(※1)に関するアップデートにより、資金調達手段の選択肢が広がりました。

具体的に申しますと、その種類は2つで、増資と親子ローンとなっています。

インド 会計税務 アップデート

もう少し詳しく変更点についてご紹介させていただきますと、従来は、下記の通り4種類に分類されていたECBが、

  • Track1(外貨建中期) 
  • Track2(外貨建長期)
  • Track3(インドルピー建中長期)
  • マサラボンド(インド国外発行のインドルピー建債権)

下記の通り2種類の分類に変更となり、

  • 外貨建ECB 
  • インドルピー建ECB

制度の複雑さが減少しました。

 

また、対象借入業種が拡大しました。

従来はTrackに応じて対象借入業種が設けられており、主に製造業やソフトウェア開発、インフラ開発企業等限られた業種のみがECBを行える状態でしたが、アップデートにより外貨建ECB、インドルピー建ECBに関わらず、外国直接投資を受ける事が可能な全ての事業体が対象借入業種として設定されました。

これにより、今までは認められていなかった商社や販売会社等もECBを行う事が可能となりました。

 

さらには、最低平均借入期間が短縮されています。

従来はTrack1と3がUSD50百万相当以下の金額は3年、USD50百万相当超の金額は5年、Track2は金額に関わらず10年と定められていました。(別途下記条件有り)

  • 製造業でのUSD50百万以下の金額の場合、最低平均借入期間は1年で可能
  • 資金使途が運転資金の場合は、外国株主からの借入かつ最低平均借入期間5年であれば可能

しかし、新規制後は、金額に関わらず最低平均借入期間3年へ変更になりました。ただし別途、規制は従来通り存在するのでご注意ください。

 

カンタン用語解説
※1ECB(External Commercial Borrowing・対外商業借入):インド居住者よるインド非居住者の親会社や金融機関等からの借入の事。(例:親子ローン、銀行借入等)
 
 

増資、親子ローン(借入)のメリット・デメリット

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。それは、増資とするか、親子ローンとするかの判断です。

インド 会計税務 アップデート

親子ローンは、借入とも言い換えられます。
増資とは
、返済不要の資本増加による資金調達のことを言い、借入とは、返済義務のある負債増加による資金調達のことを言います。

今回は、増資については普通株式を発行する場合、借入については親子ローンもしくはECB(対外商業借入)を行った場合について考えてみます。

 

まずは、増資のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

インド 会計税務 アップデート 増資

メリットでは、

  • 基本的に返済の必要が無く、インド法人側の負担が少ない
  • 決算書上「資本」計上となる為、「負債」計上よりも客観的に信用がある
  • 申請後は報告などの業務対応が必要無い
  • 本取引に関しては移転価格リスクが発生しない

 

デメリットでは、

  • 移転価格等が厳しく見られるインドでは、利益還流が難しい
  • 資本金50百万ルピー以上の会社は、社内に常勤の会社秘書役(Company Secretary)を設置しなければいけないルールがあり、コストが増える
  • 借入よりもプロセスが多く、申請時の手続きは煩雑
  • 非上場会社は純資産25億ルピー以上で会計基準IND-ASを強制適用

が挙げられます。

 

続いて、借入のメリット・デメリットについても見ていきましょう。

インド 会計税務 アップデート 借入

メリットでは、

  • 利益還流方法の少ないインドでは「利息」による還流が行える
  • 申請手続きは、増資手続きよりも容易

 

デメリットでは、

  • 決算書上「負債」計上となる為、「資本」計上よりも客観的な信用が無い
  • 申請後にも毎月の報告が必要となり、遅延するとペナルティが発生する
  • 利息に対する移転価格リスクが発生する

が挙げられます。

 

増資か親子ローン(借入)の選択・判断方法とは

自社にとっては、増資と借入、どちらの方がメリット大きく感じられましたでしょうか。
増資なのか借入なのかを選択・判断するにあたり、おススメのプロセスをご紹介します。

インド 会計税務 アップデート

まずは、今回の資金調達によって追加発生コストがないかを確認しましょう。

今回の増資で資本金50百万ルピー以上となる場合については、社内に常勤の会社秘書役設置することが必須となります。また、今回の増資で純資産25億ルピー以上になる場合には、会計基準IND-AS対応が必須となります。ご注意いただければと思います。

また、この章の最後に、日本経営的目線による、増資したほうがメリット大きい場合、借入したほうが有意義な場合の特徴についてご紹介します。悩まれている方は、是非、参考にしていただければと思います。

インド 会計税務 アップデート 増資 借入

増資はこんな方にオススメ



まず、増資がおススメな会社の特徴についてです。ここでは、以下の3つを挙げさせていただきます。

  1. 長期の目線でインド事業に投資し、直近で親会社への利益還流を検討していない会社
  2. 利息での還流がなくても、十分に親会社への利益還流の方法を準備して整えている会社
  3. 負債の金額等で、会社の信用評価をされるケースが多い会社 など

借入はこんな方にオススメ

 

続いて、借入がオススメな会社の特徴についてご紹介します。増資同様、3つのポイントを挙げさせていただきます。

  1. 親会社への利益還流が近い内に必要となる会社
  2. 親会社として、早めに資金回収を行いたい会社
  3. 早く資金調達をしなければいけない会社 など

 

いかがでしたでしょうか。一つの判断目安として、お使いいただければと思います。

 

2019年1月22日、借入金/未払い金に関するアップデート

続いては、借入金/未払い金に関するアップデート内容2つについてご紹介します。

インド 会計税務 アップデート 未払金

まず、1つ目です。

インド企業の借入金、金融商品の報告に関しては、政府関連企業を除く全ての会社が、2019年4月22日まで(2019年1月22日より90日以内)に「DPT-3フォーマット」にて、通常の預金とはみなされない下記詳細を会社登記局(ROC)へ報告する必要があります。

  • 借入金(担保有、担保無)
  • 金融商品

対象期間は、2014年4月1日~2019年1月22日まででしたが、2019年6月末まで延長されました。

 

続いて2つ目です。

零細企業、中小企業に対する未払費用に関してもアップデートがなされました。



初回申告では、企業は2019年1月22日時点での零細企業や中小企業への未払費用詳細を、2019年1月22日から30日以内に総務省(MCA)に提出しなければならなくなりました。

また、半期申告については、零細企業、中小企業より、サービスや商品の提供を受ける全ての会社は、受領日より45日以上経過した零細企業、中小企業に対する未払費用を半期毎に総務省(MCA)に申告する必要があります。申告時期は10月末と4月末となっています。

注意しましょう。

 

【2019年】インド会計・税務アップデートまとめ−後編−」では、

  1. 【2019年】インド会計・税務アップデートの日本経営的注目ポイント

    (1)2019年7月5日、新国家予算発表
    (2)2019年9月20日、新税率・MATに関するアップデート

  2. 【2019年】インド会計・税務アップデートから考える、傾向と今後

についてご紹介しています。

 


こちらは2019年中におこったアップデートの復習記事となります。
上記の通り日系企業に影響の大きなアップデートも多くあり、インドでは1年も経てばでルールが大きく変わっているという事をまずご理解頂ければと思います。

インドは簡単な投資環境で無いと思いますのでしっかりと計画や戦略を立てて臨むべき国だとは思いますが、その反面随時発生するアップデートに対応出来るような臨機応変さや余白を作っておく事もとても大切です。
過去のアップデート内容や今後可能性のあるアップデート等確認されたい場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】
本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  

インド 会計事務所

 

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