ここでは、インド内国法人の詳細についてご紹介していきます。
インド内国法人には、無限責任会社、保証有限責任会社、株式有限責任会社の公開会社(Public Company)、株式有限責任会社の非公開会社(Private Company)の4種類が存在します。
ここでは、インド内国法人のそれぞれの特徴と公開会社(Public Company)と非公開会社(Private Company)メリット・デメリットについて解説します。

インド内国法人の概要
内国法人とは、インドの法律に基づいて設立された法人で、配当の支払に関して所定の要件を満たした法人のことを指します。外国法人や、有限責任事業組合(LLP)と比較すると、法人税率が低い点もメリットの一つです。
また、外国資本からの100%出資が原則可能(一部、出資割合に制限有り)で、当地で行える事業内容についても自由度高く設定でき、定款に記載することで柔軟な経済活動を行える点が魅力です。そのため、なかなか事業計画通りにはビジネスが進まない、ハードシップが高いインドにおいては、他国での進出に比べても大きなメリットとして感じられることが多いようです。
逆にデメリットとしては、撤退する際の精算に時間がかかる点、定期的なアップデートにより新税率や軽減税率が変更になる可能性がある点が挙げられます。現時点では低い法人税率ですが、新税率や軽減税率の制度がなくなり、基本税率課税となると、課税所得1000万INR以下でも実効税率31.20%となります。
内国法人・概要一覧
内国法人 (非公開会社(Private Company)) |
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準拠法 | Companies Act, 2013 |
事業内容 | 制限なし |
設立必要期間 | 3週間程 |
取締役数 | 2名以上 |
法人税 実効税率 |
25.17%(※1) |
最低代替税 実効税率 |
無し(※1) |
閉鎖必要期間 |
【精算・破産続きの場合】1~1.5年 |
その他特徴 |
・インドでの一般的な会社形態である為、改正事項の |
(※1)2019年9月20日にアップデートされた新税率を選択した場合に限ります。2019年10月1日以降設立され2023年3月末までに精算を開始した製造業に限り17.16%となります

インド内国法人には4つの種類
ここからは、内国法人の中の無限責任会社、保証有限責任会社、株式有限責任会社の公開会社(Public Company)、株式有限責任会社の非公開会社(Private Company)の4種類についてご紹介していきます。
1.無限責任会社
社員(出資主)が、会社の債務につき、会社債権者に対して会社とともに無限連帯責任を負う会社のことを指します。これは、日本法上の合名会社(※1)に相当します。保証有限責任会社との主な違いは、会社が清算、解散に至っていなくとも社員に対して責任追及できること、社員が責任を負う金額に制限がないことなどがあります。
2.保証有限責任会社
会社が清算、解散するに至った場合、株主があらかじめ定められた金額を上限として、会社の債務に対して責任を負う会社形態を指します。
3.株式有限責任会社
出資者の責任が、保有株式の金額に限定されている会社形態で、日本の株式会社に該当する形態を指します。
インドでは、2013年会社法において、株式有限責任会社は払込資本金額(※2)や株主数、定款の規定に応じて「公開会社(Public Company)」、「非公開会社(Private Company)」の2種類に分けられています。いずれもインドに居住する取締役が必要になります。
このように2種類ある中で、日系企業がインド法人を設立する場合、そのほとんどが、株式有限責任会社の中の「非公開会社」を選択します。インドでは、商号(社名)を見ると、公開会社か非公開会社かを区別でき、公開会社には「Limited」、非公開会社には「Private Limited」が社名の最後に付与されます。
それでは、なぜ、日系企業の多くが株式有限責任会社の中の「非公開会社(Private Company)」を選択するのでしょうか。以下では、それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく見ていきたいと思います。

公開会社(Public Company)と非公開会社(Private Company)のメリット・デメリット
公開会社(Public Company)
公開会社とは、以下4点の規程を付属定款(articles)に定める会社と定義されています。
- 株式の譲渡を制限
- 株主が2名以上50名以下
- 株主、社債の公募を禁止
- 一般からの預金の預入れを禁止
また、主なメリット・デメリットについては、以下の通りです。
メリット | デメリット |
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非公開会社(Private Company)
非公開会社とは、以下3点が附属定款に定められている会社のことを言います。
- 株式の譲渡が制限される
- 株主数が制限される(200人以下)
- 証券の公募が禁止される
メリット・デメリットについては、以下の通りです。
メリット | デメリット |
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インド進出日系企業の多くが、非公開会社(Private Limited)を選ぶ理由
これまで、インド進出を果たした日系企業が、株式有限責任会社の非公開会社(Private Limited)を選択した理由には、インド進出の目的が関係しています。
インド進出企業の多くは、日本で一部上場しています。そのうちの約5割(2018年JETRO調べ)は製造業であり、自社製品のインド市場での売上拡大が目的です。つまり、従来のインド進出日系企業は、非公開会社(Private Limited)のメリットである資金調達を目的としていなく、むしろコンプライアンス遵守のための間接コストを、自社が負担しなければならない点がデメリットとなっていたのです。
また、公開会社とするのか、非公開会社とするのかの選択については、基本的にはインド法人発起人の意志に任されていますが、銀行や保険会社などの一定業種については、公開会社で設立しなければならないという決まりがありますので、ご注意ください。
※1 合名会社:持分会社の種類の1つ。合名会社の社員(出資者)は、会社の債務に対して無制限に責任を負う「無限責任社員」だけで構成されるという特徴がある。つまり、家族や親戚、親しい知人などの少人数で運営する会社に適しており、設立のためには無限責任社員1名以上が必要となる。
※2 払込資本金額:株主が株式と引き換えに会社に対して支払った金銭や現物のことをいう。資本金と資本準備金によって構成される。
今回は、インドの日系企業の多くが選択している進出形態「内国法人」に関してご説明させて頂きました。ただ注意頂きたいのは、それぞれの設立形態にはメリット・デメリットがあるということです。それぞれの特徴を理解して納得した上で、進出形態を選択される事をお勧めします。そのほか、ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

◆古東 翔二朗(インド法人責任者)
税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。
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