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2019年1月アップデート|親子ローン/対外商業借入(ECB)の規制緩和と、外貨建て・ルピー建てECB規制

インドで資金調達|外国企業が可能な資金調達の方法」では、インドにおいて外国企業が資金調達する方法の概要についてご紹介しました。  

今回は、日系企業を含む外国企業が、資金調達で良く利用する借入方法の一つである「親子ローン/対外商業借入(External Commercial Borrowing以下、ECB)」において、2019年に発表された規制緩和の内容と、外貨建て・ルピー建てに関する規制の内容についてお伝えいたします。

この規制緩和が発表されるまでは、原則製造業のみが「ECB」つまり親子ローンを選択できる状態で、その他業種は「増資」一択でした。この緩和に伴い、製造業以外も親子ローンを行う事が可能となった事で、自社の戦略や展望に基づいた資金調達の意思決定が必要となりました。

本記事を通して、必要な事項やルールを確認の上意思決定頂ければと思います。  

 

【2019年1月発表】インド外国企業借入に関する規制緩和

 

まずは、2019年1月に行われたアップデートにおける規制緩和の内容について見ていきたいと思います。この時、大きく分けて以下3つの規制緩和がなされました。

1)  ECB分類の変更
2) 対象借入業種の拡大
3) 最低平均借入期間の短期化

ここからは、上記3つについて細かく見ていきましょう。  

ECB分類の変更

まずは、ECB分類の変更についてです。 この変更により、ECBの種類が簡素化され、制度が簡易化しました。
従来は下記の通り4種類でした。

・Track1(外貨建中期) 
・Track2(外貨建長期)
・Track3(インドルピー建中長期)
・マサラボンド(インド国外発行のインドルピー建債権)

それが、2019年1月のアップデートで下記の通り2種類へまとめられました。

・外貨建ECB
・インドルピー建ECB

 

対象借入業種の拡大

続いては、対象借入業種の拡大についてです。 これにより、従来、借入が認められていなかった商社や販売会社等もECBを行う事が可能となりました。

これまではTrackに応じて対象借入業種が設けられており、主に製造業やソフトウェア開発、インフラ開発企業等限られた業種のみが、ECBを行える状態でした。これらが2019年1月の規制緩和により、外貨建ECB、そしてインドルピー建ECBに関わらず、外国直接投資を受ける事が可能な全ての事業体が、対象借入業種として設定されました。  

最低平均借入期間の短期化

そして最後に、最低平均借入期間の短期化についてです。 2019年1月のアップデートでは、借入の金額に関わらず最低借入期間が3年に変更となりました。

これにより、従来では、Track1と3が借入金額USD50百万相当以下においては、借入期間が3年、借入金額USD50百万相当超では借入期間が5年、Track2は借入金額に関わらず、借入期間が10年と定められていました。(別途下記条件があります)

・製造業で借入金額がUSD50百万以下の場合、最低平均借入期間(※1)は1年で可能
・資金使途が運転資金の場合は、外国株主からの借入かつ最低平均借入期間5年であれば可能

これらにより、短期間での借入対応も可能となりました。しかし、特に多いと考えられる”運転資金”の場合は上記規制が従来通り存在し、最低平均借入期間5年間での対応が必要ですので、その点ご注意ください。

カンタン用語解説
※1 最低平均借入期間:単純な借入期間ではなく、返済条件等を基に算出される期間期日に一括返済される条件とするならば、借入日の 5 年後に一括返済する必要がある。一定期間ごとに一定の金額で返済される条件(元金均等返済)とするならば、借入日の 10 年後に返済が完了するように設定する必要がある。
 

外貨建のECB規制

ここからは、2019年1月に行われたアップデートにおける規制緩和の一つ、ECB分類の変更に伴って発生した外貨建てECBにおける規制内容について見ていきましょう。

外貨建てとルピー建てに関しては、それぞれ会社の都合によっても選択が異なってくるので一概にどちらが良いかという事は難しいのですが、為替や上限金利等事前に確認した上で対応下さい。

尚、概算ですが外貨建ての上限金利で約7%程となります。
(※タイミングによって変わりますのであくまでも参考数値となります事ご了承下さい。)

また、上限金利とは別に移転価格の問題もありますので、その点も考慮の上金利を設定頂くよう注意願います。

以下の表をご覧下さい。


対象借入業種 外国直接投資を受ける事の出来る全ての事業体
ネガティブリスト

以下の資金使途でのECB借入は不可
・不動産事業
・証券市場への投資
・企業への出資
・運転資金(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・一般資金(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・ルピー建借入の返済(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・上記使途での転貸

平均借入期間

金額に関わらず、最低平均借入期間3年
・製造業でのUSD50百万以下の金額の場合、最低平均借入期間は1年で可能
・資金使途が運転資金、一般資金、ルピー建借入金の返済に該当する場合(外国株主からの貸付のみ許容)、最低平均借入期間は5年

貸付可能者

FATF(金融活動作業部会)、
または IOSCO(証券監督者国際機構)加盟国の居住者

上限金利

6Month LIBOR
もしくはその他の6Month のインターバンクレート
+450bps

上限借入金額

USD750百万相当
海外直接投資者からの ECB 金額がUSD5百万超の場合、
資本金:ECB=1:7 を上限とする

ヘッジ義務

インフラ関連企業である場合は ECBが平均借入期間5年未満の場合、70%のヘッジ義務あり

 

ルピー建のECB規制

続いても、2019年1月に行われたアップデートにおける規制緩和の一つ、ECB分類の変更に伴って発生したルピー建ECBの規制内容について見ていきましょう。

概算ですがルピー建ての上限金はで約10%程となります。
(※タイミングによって変わりますのであくまでも参考数値となります事ご了承下さい。)

また、上限金利とは別に移転価格の問題もありますので、その点も考慮の上金利を設定頂くよう注意願います。

下の表をご覧ください。

 

対象借入業種 外国直接投資を受ける事の出来る全ての事業体
ネガティブリスト

以下の資金使途でのECB借入は不可
・不動産事業
・証券市場への投資
・企業への出資
・運転資金(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・一般資金(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・ルピー建借入の返済(外国株主からの最低平均借入期間 5 年の条件を満たす借入を除く)
・上記使途での転貸

平均借入期間

金額に関わらず、最低平均借入期間3年
・製造業でのUSD50百万以下の金額の場合、最低平均借入期間は1年で可能
・資金使途が運転資金、一般資金、ルピー建借入金の返済に該当する場合(外国株主からの貸付のみ許容)、最低平均借入期間は5年

貸付可能者

FATF(金融活動作業部会)、
または IOSCO(証券監督者国際機構)加盟国の居住者

上限金利

同期間のインド国債金利+450bps

上限借入金額

USD750百万相当

ヘッジ義務

特になし

 


資金調達の方法として、「親子ローン」を選択する事は、多くの会社にとって有利な選択となると考えます。しかし、正しく計画出来ていないままの借入や、手続き方法が明確になっていないまま対応を行うと、毎月の業務が増えてしまったり、為替などのリスクが増えてしまったりとリスクもあります。必要な資金を必要なタイミングで、そして返済までを見据えて対応頂くようにして頂ければと思います。必要な場合は、我々のような専門家へご相談頂ければ幸いです。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】
本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  

インド 会計事務所

 

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