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インド海外子会社の不正防止のための5つのポイント

インドに海外拠点を持つ日系企業では、不正リスクを抱えています。

JETROの報告書では、「2017 年に実施された不正実態調査に拠れば、78%の企業において不正発見件数が増加、不正が発覚した企業のうち 68%が直接的な影響を受けたと回答」とあるように、実際に現地子会社では多くの企業が不正を経験しています。

これらを未然かつ最小限の直接的影響に抑えるために、日本本社や日本人現地管理者ができることは、不正を防ぐための内部管理体制を整えることにつきます。

ここでは、インド海外子会社の不正を防ぐための方法のいくつかをご紹介します。

インド 不正防止のための5つのポイント


インドで不正が起きやすい企業の共通点に、ローカルの監査法人の監査しか受けていない会社、日本人駐在員がいない会社、会計や購買担当者(特に支払い担当など)の勤務年数が長くローテーションもない、決済システムを明確に決めていない、などがあります。

こういった企業が、不正を防ぐために、まず取り組んでいただきたい5つのポイントについてご紹介します。

 

    1. 職務分掌
      こちらは役割を分担し、それぞれの職務や責任を分担する事を意味しています。例えば、業務受注を行ったスタッフが請求書の発行をしているようなケースでは、営業は受注契約書まで、経理スタッフがその契約書を基に請求書発行を行う等です。




    2. ローテーション(配置換え)
      インド人スタッフの定期的な配置替えや業務・責務の変更。事業や職種にもよりますが、2-3年置きのローテーションが望ましいと考えます。




    3. モニタリング 
      ・定期的な現物の確認や残高確認
      在庫や書類など、海外小会社にある現物を日本人駐在員が確認することが望ましいです。

      ・取引先訪問などの仕組み作り
      一人の担当者が取引先と懇意になることを防ぐため、二人担当制や定期的な日本人駐在員の同行などことが望ましいです。

       ・日本親会社からのモニタリング
      日本本社による会計帳票の確認や、定期的な現場訪問、もしくは第三者を利用した同等の確認を行う事が望ましいです。




    4. 内部通報窓口の設置
      社内で異変に気づいたスタッフが安全を確保した状態で、通報ができる第三者窓口を設置。
      社内に通報窓口が設置されていると、窓口の人間が不正に加担している場合もあり、外部や日本本社に設置することが望ましいです。




    5. 情報の共有
      財務分析や予測と結果の比較などが月次で報告をされていることが望ましいです。棚卸資産の増減や損失引当金(PL/BS)などは特に注意してモニタリングする必要があると考えます。

 

大前提として、タイムリーな月次報告が出来る体制になっているかがポイントです。

例えば、財務分析(比率分析等々)や予測と結果の比較などで、大きな乖離や不明確な点があった場合に、確認ができる体制となっているか?例えば仕入数値や売上数値を在庫変動に違和感が無いか、売掛金買掛金が過剰に滞留していないかなども財務報告書より確認する事が必要です

不正を見破る!勘定科目ごとのチェックポイント


上記でご紹介した以外にも、勘定科目を定期的にモニタリングすることで、不正に気づくことも可能です。ここからは、勘定科目ごとの不正を見破るためのポイントについて解説します。

 

現金および定期預金

  • 入出金について、駐在員が関与するフローになっているか
    例)出金に係る署名権限 システム上の承認権限者
  • 手許現金の管理状況 残高カウントの頻度、仮払いの状況
  • 小切手帳の管理状況 小切手の使用頻度が高い子会社は要注意(香港、インド、シンガポール)
    例)5万㍓以上の手形には二人以上のサインが必要
  • 資金繰り管理の状況確認

 

売上・売上債権

【不正の種類】過大計上(架空売上)のリスク、着服目的の過少計上のリスク

  • 売掛金回転期間分析(得意先ごとにも実施すると更に良い)
  • 入金以外の原因による売掛金の減額に注意
  • 年齢調べ等、年次別の滞留売掛金の確認
  • 収益認識基準の確認
  • 入金管理 売掛金管理システムの概要把握
  • 契約管理 新規取引までのプロセス

 

仕入れ・仕入れ債権

【不正の種類】取引先との共謀により、仕入代金の着服が行われるリスク

  • 買掛金回転期間分析(仕入先ごとも実施)
  • 支払いを伴わない買掛金の減額に注意
  • 仕入単価の変動レビュー(キックバックのチェックにも有効)
  • 仕入先の定期的な評価、見直し状況
  • 契約管理 新規取引までのプロセス

 

棚卸資産

【不正の種類】 過大計上(架空計上)による利益操作のリスク、横領目的での過少計上(過大払出)のリスク

  • 棚卸資産回転期間分析(管理レベルに応じて、製品群ごとまで)
  • 廃棄を含む売上原価以外での払出に注意(他勘定振替やスクラップ)
  • 棚卸資産の評価基準の確認、滞留在庫に係る管理資料の分析
  • 実地棚卸の状況、棚卸差異の分析
  • 架空在庫について 例)数量×単価でズレが生じている場合はリスクを疑う  

 

固定資産

海外子会社では、固定資産の現物管理が不十分なケースが多い

  • 大規模な設備投資 業者選定方法の確認
  • 固定資産に係るナンバリングの有無
  • 固定資産実査の実施状況(金型など注意)
  • 固定資産の廃棄手続きの確認
  • 建設仮勘定の内訳の確認 

 

日本人駐在員や第三者機関が、上記の勘定科目を定期的にモニタリングすることで、不正に早い段階で気づくことが可能です。

現在、インドの9割以上の会社は「Tally」というインドの会計ソフトを利用されているかと思います。
Tallyは安価で、インド人が扱いやすいソフトですが、その仕様やシステムは正直日本人にとっては扱いにくいソフトであると感じます。

インドの日系企業からは以下のような声をよく聞きます。
  - 担当者以外がタイムリーに会計情報が確認出来ない
  - 科目明細や仕訳レベルでの確認がスムーズに出来ない
  - 勘定科目の統一性が無く、財務報告書が見にくい
  - 遡及修正等の記録が残らない

日本経営では、そもそもの会計ソフトをTallyから別のソフトに変更する事、またTallyを変更する事に抵抗がある場合でもTallyの仕訳データを別の会計ソフトに流し込みクラウド型ソフトで管理する事をお勧めしています。 

これからの内部管理体制|「本社管理機能」をデジタル化するメリット


コロナ禍では、在宅ワークや、一定期間日本からインドを管理する駐在員も増えました。会社の方針で駐在員から出張ベースへ切り替わった日本人マネージメント層も増えています。

日本を起点にしたデジタルを使った内部管理できる仕組みを作ることで、タイムリーな管理体制を敷くことが可能です。

インド 会計 ERPクラウド

一つの事例に、“海外拠点向け会計・ERPソフト:multibook(マルチブック)”の活用(2層ERP展開)を導入した場合のメリットや解決できる課題をご紹介します。

 

【導入メリット】 

  • 海外拠点の状況を日本本社側でも確認可能な状態とする
  • マルチ言語、マルチ通貨、複数帳簿による情報の一元化
  • グループ財務諸表機能で、各拠点横並び比較、またPLの明細行に補足説明、補足資料を添付可能 
  • 現地会計ソフトからの仕訳データの取り込み可能
  • 承認機能や権限制限で不正ができない仕組み

 

従来の課題を解決!

  • エクセルが複数に渡って一元管理されていなかった情報(例:◯◯エクセル)
  • 日本とインドの二重業務
  • 本社への報告遅延による、資金調達等の意思決定の遅延
  • 駐在員の負担となるレポート業務
  • 統制のプロセス作成や浸透に要する時間や駐在員にかかる負担

 

ちなみに、導入費用は他社と比較して月額利用料が低いところも魅力です。

この他にも、管理業務を「外注する」し、リスクを分散させるという方法も今後考えられでしょう。現地では営業・製造に特化し、それ以外の管理業務を外注するという考え方です。

ERPソフト(Multibook)の詳細については、直接日本経営にお問い合わせください。

 


リモートワークという概念が生まれ、遠隔地からのコントロールが必要となった今、社員を守る為にもよりこの不正をさせない仕組み作りが重視されています。
中長期的にインドで事業を成長させていく為にも、現場のスタッフ、また駐在員にも権利が集中しすぎてしまわないよう、本社も巻き込んだ対策と体制を作っていって頂ければと思います。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

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本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  

インド 会計事務所

 

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