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2021年度インド国家予算発表 と 経済レポートまとめ【後編】

本記事は、前回「2021年度インド国家予算発表 と 経済レポートまとめ(前編)」に続き、インドで2021年2月に行われた2021年度の国家予算案と経済レポートの後編となります。  

▼ヘルスケア・サービス業・農業および関連部門・金融部門の動向は前編で纏めております。   インド国家予算発表は、年度により多少異なりますが、その年度における以下のような事項が発表されます。    

・経済調査結果(GDP等)  
・歳入歳出状況
 
・今後の投資計画
 
・税制改正や会計ルールのアップデート
 
・その他特別な事項
 

日系企業に対しても大きな影響が出る改正が多く含まれている為、インド関係者は注目必須です。また、多くのアップデートは4月1日より適用開始となります。  

日本経営が注目する予算発表内容をご紹介するほか、経済レポートの内容から考える傾向と今後についてもご説明します。 是非、自社のインドビジネスの参考にしていただければと思います。  

業種別の経済概況と2021年度の歳出予算案


前回記事の続きとして、経済概況と歳出予算の主要分野となる製造業、の残りを解説いたします。

 

製造業は好成長、インフラ投資は継続

道路や鉄道などの交通分野への歳出は37.4%増加し、都市開発分野は9.0%増加しています。モディ首相は、2019年5月に再選時のマニフェストとして、5年間で100兆ルピーのインフラ投資を実行すると宣言していますので、2021年度においてもインフラ整備への公共事業投資を加速することで景気の早期立て直しを目指します。

工業生産指数(IIP)とコアCPIは、新型コロナウイルスの蔓延以前の程度まで上昇しており、インド国内の経済活動は強力なV字回復を果たしました。また、工業生産指数の広範囲での回復により、2019年11月では2.1%成長だった一方、2020年4月では-57.3%と最悪の状態でしたが、20年11月は-1.9%成長と持ち直しました。

世界銀行の発表する「ビジネスのしやすさ指数」のランキングにおいて、インドは2018年の77位から2020年は63位と順調に順位を上げてきており、10項目の指標のうち7つで改善が見られています。2017年の順位と比較をすると67ランクも上昇しており、急上昇国のトップ10入りを果たしています。

また、インド政府は2020年5月に約20兆ルピー規模の経済支援パッケージ(Atma Nirbhar Bharat Abhiyan)を発表しています。このコロナ禍による需要落ち込みに対する経済刺激策は、GDPの15%を占めており、主要セクターやPLIにおいて発表されたことで幅広い需要喚起が見込まれます。

食品業界ではインフレ率が上昇

食料品の価格上昇を主な要因として、2020年4月〜12月までのCPI(消費者物価指数)のインフレ率は平均で6.6%でした。インフレ率は、2020年6月から12月までの期間ではインド全土で3.2%から11%の上げ幅でしたが、その後2020年12月には4.6%へ下落しています。こちらは主に食料品の価格上昇によるもので、タマネギの輸出禁止、豆類の輸入制限緩和などを行うことでインド国内の供給量が減少しないよう輸出入の調整を行いました。

なお、金の価格が急上昇しておりますが、パンデミックの際に投資家が安全資産の金の買いが増えたためとなります。

生活用品業界では生活必需品の供給が改善

水、住居、衛生用品などの生活必需品の在庫は、ロックダウンによる供給停止の影響を受けて一時的に品薄になった地域もありましたが、ほぼ全ての州で改善がされました。さらに州間における生活必需品の供給格差も縮小してきています。また、乳児死亡率や5歳未満児死亡率などの健康指標や教育指標もロックダウンによる一時的な影響も見られましたが、状況は改善されています。

また、農村部の住民支援策として進められている、上水道整備プログラム(Jal Jeevan Mission)、トイレ普及運動(SBM-G)、住宅供給支援スキーム(PMAY-G)などのスキームが、都市部と農村部における収入格差や生活必需品の供給ギャップを埋める期待が寄せられています。

財政支出政策

2020年の財政支出政策は、ロックダウンが解除後にサポートが必要となった産業への支援策や、実体経済への景気刺激策、民間企業への設備投資支援等、当初の歳出予算から大きく変更する形となりました。新型コロナウイルスの感染者数ピークを過ぎた2020年11月から2021年1月までのGSTによる税収は、毎月1兆INR(137億1,000万USD)越えを連続して記録し、2020年12月では過去最高額を記録しました。

また、モディ首相の掲げる汚職撲滅を目的として、納税制度の改革と税務当局の組織改革が進められています。納税申告制度の電子化と可視化により納税制度の透明性が保証され、税務調査の記録も全てデータベースに残されることで当局による説明責任が果たされることが期待されます。

新型コロナウイルスが及ぼすインド経済への影響はいかに?


インドで実施されたロックダウンは、世界でも例を見ない厳格なものであり、他国と同様に、国内経済へ大きな影響と混乱をもたらしました。

しかし、影響は一時的なものであり、感染拡大地域内への移動制限や貧困エリアへの生活必需品の集中供給など効率性を念頭においた政策を実施したことで、財政支出を初期段階で抑えることができたため、国内経済の混乱は最小限に留められています。

ロックダウンにより第1四半期のGDPは23.9%と大幅な縮小をしましたが、第2四半期では7.5%の減少と、その他主要経済指標の回復にも見られるように、V字回復を果たしています。なお、農林水産業においては、第1四半期と第2四半期の両方で3.4%の成長を遂げる見込みで、2020-21年の新型コロナウイルスの蔓延による影響の緩衝材として機能することが期待されています。

パンデミック第二波が押し寄せるインドでは、今後も経済への影響、低迷が心配されており、今後のインド政府の予算アップデートには、今まで以上に注目していく必要がありそうです。


2021年度の国家予算内容を見て皆様はどのように思われたでしょうか。
私はライブ配信を見ていましたが、1人1人の間にアクリル板があり、参加者全員がマスクをつけた状態での配信となっており、このような配信が今年だけになれば良いのにと強く感じました。

私としては、今回のコロナ禍の影響にて経済的なダメージは非常に大きいですが、それでもインドが医療施設や制度の改善に大きな投資をする方向を示したという事は、とても大切な事であったと思います。

もちろん全ての情報を真に受ける訳ではありませんが、こういう時だからこそポジティブなインドは頼りがいがあるとも感じました国家予算の発表でした。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】 本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  インド 会計事務所

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