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インド LLP(有限責任事業組合)の特徴と会社設立時の注意点

ここでは、インド LLP(インド有限責任事業組合)と言われる法人の種類について詳しくご紹介していきます。

インドLLPは、日系企業で設立しているケースがまだ少なく、日本語での明確なメリット・デメリットが多く公開されていない法人形態です。 こちらの記事では、インドLLPに関する概要と会社設立時に知っておきたい注意点についてご紹介していきます。

インド有限責任事業組合(LLP)の特徴

有限責任事業組合(Limited Liability Partnership)とは、インドでは一般的にLLPの略称で呼ばれ、インドLLP法に基づき設立される法人形態を指します。

また、LLP法では株式会社から LLP への組織変更が認められています。その場合には、取締役会や株主総会での同意が必須であることに加え、資産の引き継ぎや、旧株主が新LLPの社員になることなどの各種要件が定められています。さらに、一定の要件を満たさないと、キャピタルゲインの課税対象となる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

 

LLP概要一覧 

LLP
準拠法 LLP Act,2008
事業内容 制限なし
設立必要期間 3週間程
取締役数 2名以上(※1)
法人税
実効税率
課税所得
1,000万INR以下 31.2%
1,000万INR超 34.94%
最低代替税
実効税率
21.56%(※2)
閉鎖必要期間

【精算・破産続きの場合】1~1.5年
【ストライクオフの場合】2〜3ヶ月

その他特徴
  • 利益分配に関しては出資比率を比例させず、出資者内部の合意で決定が可能
  • 取締役会や株主総会等の規定はなく、コンプライアンスに関する負担が少ない
  • 所得に応じて指定社員給与の費用計上に上限がある

(※1)指定社員数
(※2)Alternate Minimum Taxと呼ばれる最低代替税と類似税金です


最近はECB規制(※1)の緩和に伴い、LLP法人を選択する日系企業も増えてきましたが、それでもまだLLP法人を設立している日系企業は多くありません。

その背景には、日本語でのLLPに関する最新情報や会社設立事例が少なく、LLP法人設立を選択した場合のメリット・デメリットが不明確である点が挙げられます。次の章から解説していきますので、LLP設立をご検討中の方は参考にしていただければと思います。

インド LLP のメリット・デメリット


まず、メリットとしては、取締役会や株主総会等のコンプライアンスに関する対応事項が少ない点、利益分配の配当に関する税金(配当支払税)が発生しない点が挙げられます。この配当支払税とは、配当のうち配当支払側のインド法人に一定率の税金が課され、一方で受取側のインド内国法人へは課税されない税制度のことです。※以前は配当支払税が発生しない事がLLP法人の特徴の1つでしたが、2020年のアップデートによって内国法人でも配当支払税が廃止されました。

しかし、日本が本社である場合には、日本の外国子会社配当益金不算入制度(※2)があるため、配当支払税に関するメリットはありません。

また、監査については、原則、インド勅許会計士からの年次監査証明が必要です。例外としては、出資額が250万ルピーを超えない場合、あるいは年間売り上げが400万ルピーを超えない場合で、該当すると監査義務が免除されます。

一方、デメリットとしては、軽減税率等(※3)のルールが適用されず、法人税率も低くない点、一部独自のルールがあり、指定社員の給与に対する経費計上について、所得に応じて上限が設けられている点が挙げられます。

インド LLP はこんな企業様におすすめ

事業規模が大きくなく、監査や取締役会等のコンプライアンス関係を省略したい方にお勧めです。また、内国法人の配当のような形で利益分配を行う際には、持ち株数等に捕らわれずパートナーの合意で分配割合が決められる事もLLP法人の特徴なので、この部分にメリットを感じられる方は選択されるのが良いと思います。

インド LLP 法人設立の注意点


インドで設立されたLLPでは、出資元の国を問わず、インド法人税法上の現地法人として扱われます。

そのため、LLP法人が得た全世界所得に対して法人税が課されます。教育目的税や高所得法人への追加税金(サーチャージ)等が課されるため、毎年の改訂に注意しておきましょう。

さらにLLPでは、株式会社に課される最低代替税(Minimum Alternate Tax)は課税対象外ですが、最低代替税と類似するAlternate Minimum Taxと呼ばれる税金が、調整後利益に課されますので、この点についても踏まえて検討するようにしましょう。

カンタン用語解説
※1 ECB規制:インド国内企業(日系企業子会社含む)に対し、インド国外からの貸付を規制するもの。インド国外からの銀行借入や親子ローンが規制の対象となる。
※2 外国子会社配当益金不算入制度:2009年度税制改正において導入された制度。一定の外国子会社から受け取る配当金を益金不算入とするもので、外国子会社からの配当にかかる二重課税排除の方法を、従来の間接外国税額控除から変更する意味を持つ。本制度の狙いとしては、適切な二重課税排除の方法を維持しつつ、制度を簡素化することにより、外国子会社の留保金を日本に還流(配当)させ、経済の活性化を図ろうとするところにある。
※3 軽減税率等:インドの所得税法にある税を軽減するために施行された税率 。

外国法人に関して記載させて頂きました。上記でご説明させて頂いた通り、外国法人を選択すべき企業は一定の条件があったり、事情がある会社で、基本的にはインドで多くの利益を出す予定が無い、もしくは長期事業展開を行う予定の無い会社が選択するケースが多いです。条件が合えば内国法人よりもメリットを感じて貰える形態であると思いますので、一度検討いただければと思います。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】
本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  

インド 会計事務所


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