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インド法人撤退。閉鎖・休眠に関する手続き

コロナウィルスによって引き起こされたロックダウンの影響を受け、インド法人を閉鎖して即撤退する、もしくは一時的に休眠する方針を取ってしばらくしてから撤退する企業が増えています。

今回は、どの撤退方法が適しているかを見極めるためのポイントを解説します。撤退する方法によって準拠する法律がインド倒産法、インド会社法に分かれており、手続きも異なる点に注意してください。  

インド法人の閉鎖 概要と手続き


インドで法人閉鎖を行う際には、自主精算Voluntary Winding Upと解散・登記抹消Strike Offという2つの方法があります。

Voluntary Winding Upは、インド法人の自主精算手続きとなり、申請前必要期間に6ヶ月程度、申請後の撤退完了までの期間は12〜18ヶ月です。

Strike Offは、最低2年間の事業停止後、登記上の情報削除と定義されており、申請前必要期間に約2年の休眠期間を要し、申請後は数週間〜6ヶ月で登録抹消となります。

 

1) インド法人の自主清算手続き

概要 インド法人の自主清算手続き
準拠法 インド倒産法/Insolvency and Bankruptcy Code, 2016
プロセス a) 債務弁済の宣誓書手配
b) 取締役会、株主総会での決議
c) 清算人の選任
d) 債権者からの承認
e) 閉鎖に関する公告
f) インド法人の資産/負債の整理
g) 会社登記局への申請 など
期間 12ヵ月~18ヵ月程
※債権者からの承認や、債権債務の整理にかかる期間による
注意点 – 原則債務超過状態では使用不可(事前の解消が必要)
– 各種承認や資料作成、清算人の手配等対応業務多数
– 取引先との関係性次第では債権債務者の承認に時間がかかる

こちらが一般的な閉鎖方法となります。少し時間はかかりますが、こちらの方法で閉鎖を行う事をお勧めいたします。

 

2) 少しの間事業停止後、登記上の情報削除(Strike Off)

概要 少しの間事業停止後、登記上の情報削除
準拠法 インド会社法/Companies Act, 2013
プロセス a) インド法人の資産/負債の整理
b) 事業停止(内国法人=2年間 / LLP=1年間)
c) 登記局への申請、閉鎖手続き
期間 6ヵ月程
※事業停止期間終了後
注意点 – 原則債務超過状態では使用不可(事前の解消が必要)
‐ 登記削除時に資本金が返却されない可能性がある

制度としてはこちらの方法を使用する事も可能です。緊急事態や仕方が無い場合はこちらの方法で対応する事も選択できます。

インド法人撤退のための4つの方法


インド法人を永続的、もしくは一時的に撤退する方法には4つの選択肢があります。

2016年以前は、選択肢が少なく法人撤退には長期間を要していましたが、2016 年にインド倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)が成立したことを皮切りに、外国企業にとって、撤退にかかる時間や費用が改善されました。

インド破産・倒産法(IBC2016)若しくはインド会社法(Act2013)に基づいて、法人撤退を進めていきます。

まずは前者のインド破産・倒産法(IBC2016)に基づく場合の自主的な精算方法です。

 

(1) 清算/Liquidation

・債務不履行の状況(事業の存続が不可能)にある会社を清算させるための手続き。10万ルピー以上の債務に関する不履行が必要。2016 年 12 月頃から開始。

 

(2) 自主清算/Voluntary Liquidation

債務不履行の状況にない会社を清算させるための手続き。精算後に発生する可能性のある問題等を可能な限り解消した後に、撤退が可能となる。2017 年 4 月頃から開始。

 

次に後者のインド会社法(Act2013)に基づく場合の精算方法です。

(3) 会社登記会社名抹消手続き/Removal of Names of Companies from Register of Companies

会社登記を抹消する形で会社を解散させる方法で2年程度の休眠期間が必要となる。NCLT(National Company Law Tribunal)の監督のもと、解散手続きが開始される。2016 年 12 月頃から開始

 

(4) 休眠会社/Dormant Company

会社を休眠会社(2年以上の必要)とすることで、事実上インド市場から撤退する方法。事業活動はもちろん、訴訟などがない企業に適用される。

インド法人の休眠


インドでの法人休眠(上記選択肢の(4))を選択した場合には、下記の対応が必要となります。

・債権債務の整理
・2年間の事業停止
・訴訟がないこと


また、休眠中も年2回の取締役会の開催や休眠会社申告書を提出するなどの、最低限のコンプライアンスを守る必要があります。




インドはルールの変更なども多く、予定通りに事業を進める事は難しい国です。安心して事業を成功させる為にも、事前に撤退や休眠に関する情報を揃え、ある程度のボーダーラインを設定される事をお勧めいたします。撤退や休眠の予定が無い会社様の事前確認も歓迎致しますので、お気軽にご連絡頂ければと思います。

古東 翔二朗(インド法人責任者)

税理士法人日本経営(現 日本経営ウィル税理士法人)に入社後、主に税務顧問・財務コンサルティング業務に従事し、2016年よりタイの提携事務所に2年間出向。日系企業の進出支援や記帳代行サービス、保険業務の日本人コーディネーター業務を行う。 2018年11月よりインド(デリー/グルガオン)へ赴任。

 

【免責事項】
本記事でご提供するアドバイス及び情報等は、記事作成時点で私どもが把握している事実及び情報、法律等に基づいています。また、本記事内でご紹介させていただいた内容のうち、法律・制度に関するものは、一般的な内容を分かりやすく解説したものです。貴殿の実行及び意思決定等につきまして、弊社は助言の範囲を超えるものではないことをあらかじめご了承ください。  

インド 会計事務所

 

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